優しい劇団 第一回公演
唐十郎・作 尾崎優人・演出
『少女仮面』
2018/9/8~9/9 名古屋 大曽根・PICO2
CAST
春日野八千代・可児穂野香
(優しい劇団)
緑丘貝・金武伶奈
腹話術師/甘粕大尉・尾﨑優人
(優しい劇団)
主任・菱川伸也
(南山大学演劇部
HI-SECO企画)
老婆・ミュウ
(劇団マネキン)
水飲み男/防空頭巾女・柳川十三
ボーイ/防空頭巾女/
看護師・中島虚数
ボーイ/防空頭巾女・トイドラ
STAFF
舞台監督/制作/照明・大岩右季
(優しい劇団)
音響/制作・野村知代
撮影/制作・磯部航汰
制作・篠田栞
***
宣伝美術・ミュウ
劇伴・トイドラ
(名大作曲同好会)
あらすじ
宝塚を夢見る少女、貝と老婆は宝塚の大スターである春日野八千代が経営する地下喫茶『肉体』を訪れる。
胎内を思わせるその店の中で『嵐ヶ丘』の稽古を通じて互いに惹かれ合う貝と春日野。その中で紐解かれる春日野の秘密。
永久の処女とは、肉体の乞食とはなにか。
ひとりぼっちの『嵐ヶ丘』で春日野八千代はなにをみるのか・・・。
ギャラリー
『少女仮面』
ご感想まとめ
『少女仮面』について 文・尾﨑優人
実は僕は『少女仮面』を読んだ事がなかったのです。
戯曲自体はもちろん知っていたし、内容も何となくはわかっていたつもりでした。
ですが、実際に上演を勧められ台本に目を通すと、予想の何倍も濃くて満つな唐十郎の特権的肉体論の世界がそこには描かれていました。
優しい劇団として公演を打つのははじめの方から決まっていましたが、劇団として活動するという話が出たのはかなり後でした。
優しい劇団と名付けた団体の第一歩がこんな濃くて生々とした舞台でいいのかと思われるかもしれませんが、『少女仮面』は、少なくとも優しい劇団での『少女仮面』は優しい、今の世界のための演劇になっていたと僕は確信しています。
この半世紀前の戯曲と向き合い、平成の最後の夏に僕らが唐十郎と感覚を共有出来たと思うことは『肉体』そして『肩書き』って言われてるものだと思います。
観てくださったお客様はお分かりかもしれませんが、
この戯曲の大きなテーマは
『肉体』だと思っております。
そしてその肉体は今の世の中で何を指すのか、それを探し求めた答えが僕の中では『肩書き』と呼ばれるものだったのです。
宝塚の大スター、永遠の処女、肉体の乞食と呼ばれた春日野八千代が、最後、全てを捨て去り、全てに捨てられて、何者でもないことの確信をもって外の世界に旅立つ。そんなお話。
今の世界は肩書きだらけです。
学生、会社員、自営業、公務員、大人、子ども、男、女、人間、虫、動物。
僕の肩書きを羅列すると男、未成年、役者、演出家。余り思い付かなかったですがこんなところでしょうか。
これらの肩書きのお陰で尾崎優人は構成されてます。 ただ、これらの肩書きがもしなくなったらどうなるのか。
時々自分は、自分のことを誰も知らない、そんな町へ旅に出たくなります。
春日野八千代が何者でもなくなり、劇場の外へ飛び出すラストシーン。
僕はあのシーンに希望を見いだしたかったのです。
春日野を演じた団員の可児に、希望を持って演じて欲しいとお願いしました。
何者でも無いということは、決して悲劇ではないと、社会に旅立ち何者かもわからない僕たちの未来は、決して暗くはないと、
そんな微かな希望を持った演劇でした。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
優しい劇団と出会ったと言うだけで、貴方の明日が少しでも気軽になったなら幸いです。
また劇場でお会いしましょう。